常識はずれ人物伝 ・ その二
「 部 長 、こ ん ど の 新 人 は す ご い で す よ 」
わたしが地元の商工業団体の青年部部長になってからしばらくしてのこ
と。どうみてもじぶんより年上に見える担当事務局員がこう切り出した。
当時、わたしが部長になると同時に定年で卒業する部員が多くでたため、
新入部員の確保が命題だった。
待望の新人であったのだが、事務局員がにやけているのはそれだけでは
ないようだ。
「 た い そ う な イ ン テ リ 」
というのだ。あとで本人に聞いてわかったのだが、なんと東部の名門コ
ロンビア大卒で世界最大のクレジットカード会社ニューヨーク本部に勤
務していたという。
そんな人物がなぜこのまちに戻ってきたのか。
(じつはそれは現在に至るまでなぞだ。こちらが聞きそびれてい
るだけかもしれぬが、あえて触れてはいない)
じっさいに本人にあってひょうしぬけした。ぼくとつな人柄であり、才
気走ったところなどまったくない。
かれの家も魚の加工場で、家族だけで製造するホッケの開きが有名だ。
わたしはネット販売をはじめて、自社以外の商品も扱うようになり、そ
のホッケをすこしだけ仕入れて売った。
「美味い」と評判になり、次のオーダーを出した。 すると、
いつまでたってもできあがらない。
たしか二~三日したらできあがるといっていたはず。
その後も「明日もって行きます」といわれ喜んでいたら数日まってもこ
ない。 電話すると、
「 さ ば い て み た ら モ ノ が 良 く な か っ た 」
という。 そしてほんとうに忘れたころじっさい依頼した数の半分以下
を持ってあらわれるのだ。
これは注文数が少ないので、こちらをあいてにしていないのだろうか、
などとも勘繰れるところだが、かれの人柄を知っているわたしにはどう
もそう思えない。
数年つきあううちに事情がのみこめた。
....じつはここ数年、原料のホッケがほんとうに良くなかったそうな。
かれはホッケの品質にこだわっているのであり、納期にはまったくこだ
わりがない。
そういう人物なのである。
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